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お休みの日に、映画「この世界の片隅に」を見てきました。
映画評論なんかは到底できないのですが、感じたことを綴ってみようと思います。
感じることの多い映画で、ぜひたくさんの方に見ていただきたいなと思いました。戦時中の広島を描いていますが、いわゆる反戦映画というわけでもなく、私はニュートラルに見られたと思います。
もちろん戦争の凄惨さとか日常の尊さというテーマも一つあるけれど、私がひとつ感じられたこととは、「変わらないでいることが女のたたかいである」ということでした。
刻々と変わっていく(悪化していく)戦況の中を戦地に向かう幼馴染の男性と、主人公すずさんとの再会のシーンがありました。
そこで幼馴染が言ったこととは、「すず、お前は変わらんなぁ、お前だけは変わらんでおってくれ」というメッセージでした。変わらないことこそが、すずさんの役目だったのかもしれません。
戦時中でありながら、主人公すずさんの日常はどこかのんびりしていて、それは、足音もなく近づいてくるという戦争のある意味のリアルを描いてもいるし、たくましく生きていた我々の祖母たちの姿をも描いている。
その中に、銃後の彼女たちの戦いとは何だったか、そしていつの時代も変わらぬであろう女の戦いとはなにかが見えてくるような気がしたのです。
戦争が続いていても、戦争が終わっても、時代が変わっても、暮らしは人生はつづいていく。
暮らし続け生き続けることが女の戦いである。
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そんなヒロインの姿を見ながら、私はいわゆるヒーローズジャーニー理論というのを思い出していました。
上司に教えてもらったのですが、神話学者ジョーゼフ・キャンベルさんという人の神話論で、各地の神話に登場するヒーローの物語の構造、なのだそうです。詳しくは、本を読んでいないので分からないながらも、調べてみると、
「ヒーロー」の物語とは、以下のように構成されている。
1.天命 Calling
2.旅の始まり Commitment
3.境界線を越える Threshold
4.メンターとの出会い Guardians
5.悪魔との戦い Demon
6.成長 Transformation
7.課題完了 Complete the task
8.帰還 Return home
この物語を通して、主人公(英雄)が成長していく物語は、たしかにヒット映画などに多く共有していますし、日本の物語でもわかりやすいところでいうと「桃太郎」なんかもこのパターンですね。
ところがこの映画の主人公「すず」には、これにぜんぜん当てはまらないのです。
1.「天命」→たまたま生まれた家の家業を自然と手伝っていて、
2.「旅の始まり」→気が付いたら縁談がまとまっていて、
3.「境界線を越える」→言われるまま見知らぬ家にお嫁に来て、
4.「メンター」→たまに義理のお姉さんのいじわるされながら(彼女が実がメンターだったのか!?)、
・・・この続きを書くとネタバレになりますので書きませんが、
はたして、すずさんは成長したのか、課題を完了したのか。帰還することもあるのかどうか。
というお話ですが、私にとってはとても共感してじんわり来るお話でした。
多くの人がそうであったから、ヒット映画と呼ばれているのでしょう。
思うに、このヒーローズジャーニーの構造に当てはまらないにも関わらず、絶大な人気を誇る物語も多くあります。
特に女性が主人公のお話で多いでしょうか。同じ時期に観た映画ではバイオハザードの主人公アリスもそんな風に見えます。
何かに目覚めて旅を始め成長していくというより、最初から強くって、旅の始まりは思い出せないといった感じです。その旅の結末は、課題を解決して大いなる成長をするというわけではなく、実は本当の自分を見つけるというものでした(これもネタバレなので詳しく言えませんw)
「風の谷のナウシカ」などもそうだと思いますね。ナウシカには最初から答えが分かっていて、自分でも訳が分からず導かれて暴れまくるという感じもあります。ラピュタのシータもそんなヒロインに見えます。
「一本の線の先に成長した自分がいる」という絵が描きにくいのが女性の脳みそでもあり、そのために迷ったり、自分でも意味不明な行動が出てしまうのもヒロインの特徴かもしれませんね。しかしいざというときには直感で動き、ものすごいパワーを発揮するのも女性の特徴です。すずさんにもそんな風に突如としてパワフルになる一面がありました。男性にとってみればそういうところが、何がどうなったのか到底理解できないかもしれませんが・・・(笑)
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女のたたかいとは、成長よりもどちらかというと「変わらない」ことであり、成長してレベルアップ!というより、答えは最初から自分が知っていて、強いて言うならその内なるものに気が付き目覚めるというのに近い気がします。それを目覚めさせるのは、導いてくれる師匠も大切だけど、どちらかというと大自然からのメッセージとか、幼いころの記憶にある呪文とか、何か第六感に近いものが引き金になることが多いようですね。
さてヒーローズジャーニーに対して、女の旅とは何だろう?と考えます。
「ヒロインズキャッスル(城)じゃないですかね?旅してくるヒーローをお城で待っている感じ」と言ったら、
「城を築くというのも何だか古いおじさんぽい(笑)」と突っ込まれましたが、でもそういうことだと思いますね。
キャッスルじゃなくハウスでもいいのですが、何か変わらずにいつもそこにあるもの、こそが、ヒロインにとって大事である気がするのです。
そんなことが頭の中をぐるぐる巡る映画でした。
ぜひ、おすすめですよ。