地域型木造建築とは何か、コーディネーターとは何か?

先週京都の勉強会で、この春大学を卒業する林業女子会メンバーの卒論を聞かせてもらいました。地域の無垢材を使った「地域型木造建築」に関する丁寧なヒアリングを重ねた聴き応えのある研究でした。

その概要は、地域材を地域の建築に利用する場合の、川上~川下、そして行政やNPO等、施主との「連携」に着目し、課題を洗い出すというものでした。結果として見えたのは、やはり流通を経るほど木の価値の伝言ゲームがうまくいっていない、最終的に山にほとんど利益が還元されない、という実情。

お話を聴きながら、自分事に重ねて感じたことがたくさんありましたので、備忘録も兼ねてコラムにまとめてみます。

「地域型木造建築」とはいったい何をめざすものなのか

「地域型木造建築」とは何か、まず言葉の定義そのものが難しいと思いますが、一つ共通する明確な目的としては「地域の山の木を地域で使いたい」ということでしょう。

では、地域の木といっても、どんな木を使うのでしょうか。山には若い木、大きな木、いろいろ生えています。

ここで、いわゆる使い道の少ない”小径木”とか”低質材”をなるべく多く使おう、というのも、大事に育てられた高品質な木を高く買って使おう、というのも、どちらも正解だと思います。

 

大事なのは、

①住宅のコンセプトやデザインに沿うこと
②コストや加工の観点から無理のない木材の使い分け(適材適所)
③地域の木を使うことで地域の森をどう作っていくのかというビジョン(目標林型)にしっかり連動させること

です。
実は、③の目的をもっとも実現しやすい建築であることこそが、「地域型木造建築」の最大の利点であるかもしれないのです。

ただ、今の山のつくりや加工の立地からして、何から何まで全て地域材を使ってやると、高くつく、適した材料がないといった不合理も多々起きるし、日本全国に目を向ければブランド材を含めてせっかく多様で面白い素材、安くて質のいい製品もたくさんあるのだから、全国規模での流通とうまく調和させないとつまらない建築になってしまいます。

 

そして忘れてはならないのは、お施主様の存在です。

今回の調査結果から最も明確に言えたことを聞いてみると、その一つは、地域の木を使うことに対してお施主様は価値を感じ、家づくりに満足された、ということだそうです。これは建築材料に関わる関係者にとって、とても幸福なことです。

建築である以上、まず使う人に喜ばれることが第一。これを忘れて無理して地域材を使ったとしても本末転倒でしょう。

 

「コーディネーター」の立ち回りの難しさ

研究の結論としては、いわゆる「木材コーディネーター」が必要とのことでした。山元に利益を還元できるような木材流通やコスト管理をする調整が必要だというのです。それは一つの明確な答えであり、実現できたらいいと思いました。

ただし、現状では色々な難しさを孕んでいます。

 

その1:ポジション(立場)の難しさ。

木材利用や流通において、「山元にお金を落とすこと」だけが最適解なのでしょうか。いったい誰のために苦労してコーディネートするのが、コーディネーターの仕事なのでしょうか。

そりゃ、みんなが得をして幸せになれる調整ができたら理想ではありますが、常に全くの「中立」の立場であり続けるというのは、さすがに疲れてしまいそうです。

そのようなジレンマに陥らないためには、まずはプロジェクト毎の目的を明確にすること。森林所有者に利益還元するために立木価格を上げることなのか、加工業者を育てるためのチャレンジなのか、などなど。

もしくは、やはり、どこかの流通段階に所属し立場のわかりやすい人が”コーディネーター的役割”を演ずるのがいいだろうと感じています。そうすることが、コーディネーター本人にとっても関係者にとっても、理解がしやすいだろうと思います。

 

その2:対価を得る難しさ。

現状、コーディネートそれ自体が職業として成立している事例は少ないと思います。

既存の木材流通には存在しなかった新しい職能である「コーディネーター」の人件費は、いったいどこから出るのでしょうか。一歩間違えると、結局その分のコストが増大するだけだと捉えられてしまうおそれがありますから、関係者の納得を得てきちんと対価をいただけるだけの「付加価値」を提供しなくては意味がありません。

また、コーディネーターの人件費は稼働時間で計算する日当で支払われるものなのか、専門技術者に支払われる報償なのか、それも定かではありません。もしかしたら、どこかの流通段階で木材代に上乗せされて、製品価格に反映されるのが現実的かもしれません。たとえば木材流通店の社員が業務の中でコーディネーター的役割を務める中で、見積や企画提案段階であらかじめ販売価格に含んでおく、といったやり方が考えられます。(現状そのような構造になっていると思います。)

 

その3:専門性や独自性の難しさ。

コーディネーターといっても、何かしらのプロであるべきと思います。

たとえば、森林施業ができる、加工ができる、流通を知り尽くしている、建築士の資格を持っている、ファシリテーションでお金をもらっている、などなどその人の実績や立場により、とにかく何でもいいですから。

それがあることが、信頼性や説得力につながるし、今後コーディネーターという市場が確立されてきたときに出てくるかもしれない、”なんちゃってコーディネーター”に代替されてしまわないための武器になるからです。

ちなみに、木材流通に限らず、地域づくりなどでも「コミュニティのコーディネーターとかデザイナーが必要」つまり中立的な立場で調整する人がいればいい!って答えに落ち着いてしまう向きがありますが、それを専門にして生きていける能力がありかつ善良なスーパーマンのような人は、なかなかいないのではと感じています。

 

素材だけ地元産にしてもあまり意味がない

研究内容とは別ですが、当日出席された林業関係からの情報提供で、以下のような興味深いお話がありました。

とある県で地域材利用をした大型木造物件のお話。この事例では、素材(木材)は地元産の指定があったものの、加工が非常に複雑(CLT、丸棒、防腐加工)であり県内で対応することが不可能であったため、非常なコストをかけて県外に運搬、加工したそうです。結局、地域に落ちたお金は素材代だけであったと。

ここで改めて「地域型木造建築」を考えたときに、本来は、「素材」も「加工」も地域で手がけられる、無理のない建築であるべきではないかと思うのです。

たとえば今回の事例で言えば、

・全国でも一部の工場でしか生産できない新技術である「CLT」ではなく、一般材を使う構造で設計しておいたら?(今後も県内にCLT工場建設の予定もないのなら、なおさら・・・)
・特殊な機械を使った大径材の丸棒加工ができないのなら、地元にたくさんいる大工さんの手作業で、名栗(はつり)仕上げの柱にしたら、意匠的にももっとおしゃれになったのでは?
・化学薬品を圧力でしみこませる防腐剤注入が難しいなら、自然素材である柿渋の手塗りなどで対応できなかったのか?

その場で話を聞いた限りの想像でしかありませんが、地域の実情に合わせて建築物の設計や木材の仕様を変えることで、地域で加工対応までやりきる工夫はいくらでもできたのではと思ってしまいます。

「地域材利用」が叫ばれて補助金がどんどんついているからといって、「とりあえず素材の木材だけ地域産材にすれば、加工はどんな無理をしてでもよし」というのでは、なんだか味気ないものです。

「素材」と「加工」の両方を地域にあるものを使うという制約の下で知恵を絞り、ブリコラージュ的に建築を作り上げるという、これこそが(面白い)地域型木造建築なのかなと思います。

だから自分はどうしていくか

今回の勉強会に参加させていただいて、疑問点、課題に感じること、可能性、いろいろと考えさせられました。

大事なのは、じゃあ自分がどうしていくの?ということで、以下を見出しました。

 

●自分が自信を持って言える何かの「プロ」になり、かつ、立場を明確にしていくこと(建築+αを身に着けながら、誰を何を大事にしていくのか?)

●地域(近隣市町村)の山や加工をよく知り、できるだけそれらを生かしながらも、常に、県~日本国内~世界、の視野に照らして、調和のとれた木材利用を”コーディネーター的視点”を持って行っていくこと

●木の力を借りる気持ちで、いつも遊び心をもって、お施主様に喜ばれるおもしろい仕事、魅力的な家づくりをしていくこと

 

を目指します。

課題解決よりも価値創造、人の批判より自分で実行!という考えはいつも持って、人に喜ばれる仕事をつくっていきたいです。

たくさんのヒントが得られ、考えが整理できた勉強会に参加させていただき、ありがとうございました!

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