講演「林業女子会ムーブメントの広がり」

私は一応、林業女子会の発起人(言い出しっぺ)ということで、お陰様で「林業女子会の話をしてほしい」という講演のご依頼をいただくことが多いです。

「林業女子会について知りたい」と言っていただけるのはありがたいことですし、そこから新しい出会いにつながったり、広がりが生まれたらいいなと思います。

そこで、このブログにも、これまでお話してきた講演内容を整理して、まとめて掲載しておきたいと思います。

自己紹介

私はサラリーマンの家庭で育ち、全く林業と関係なく育ってきましたが、環境問題に興味があったことから、大学で林学を専攻しました。

学生生活の中で、座学では物足りなくなって、「山仕事サークル」に入って活動していました。鴨川源流の「雲ケ畑(くもがはた)」という集落に通って、地元の山主さんたちから林業のいろはを教えていただきました。

また、そのほかにNPOなど活動を通して、京都を代表する北山林業ともいろいろご縁がつながりました。就職してからも、情報発信のサポートをしたり、北山の伝統的な衣装を着てガイドしたり、長年関わっています。

そんな中で、山で生きる人たちのかっこよさ、林業の魅力にすっかり引き込まれてしまい、この素晴らしさをどうにか多くの人に伝えたいと思うようになりました。それが私のライフワークになっていると思います。

林業女子会のはじまり

林業女子会は、現在は全国に広がっていますが、最初は京都で立ち上げました。2010年、大学院生のときです。

2010年当時、アウトドアを楽しむ「山ガール」とか、ファッションで森を楽しむ「森ガール」というのが流行っていましたが、なんかちょっと違うな~と思っていました。アウトドアもファッションも素敵でいいけれども、もう少し”生業”として山に関わっていくような女性の呼び名が欲しいな、と思っていたんです。

また、自分が大好きな林業の世界がまだまだ世の中に知られていないことに課題を感じていたので、新しい形でのPRをやってみたいと思っていました。

そこで、山ガール森ガールに対抗するつもりで「林業女子」という言葉を考えて、女性目線で林業について発信をしていこうというのがきっかけでした。

林業女子会は時々、林業界における女性参画運動だと思われることがあるのですが、決してそういうスタートではなかったということがわかっていただけるかと思います。

どちらかというと、「林業業界団体」というよりは、世の中に数多ある「女子会」の1カテゴリだと思っていただけるといいと思います。

林業女子会には、女性であれば誰でも入れます。最初は山仕事サークルや学生の友達、身近な林業関係の女性に声をかけ、10人くらいでスタートしました。徐々に参加者が増えて、年齢層も幅広く、林業の現場で働いている方、建築家の方、異業種の方などいろいろな方が加わってくれました。

 

林業女子会@京都でやってきたこと

林業女子会は、任意団体です。活動目的は大きく2つあります。

1.林業の魅力を伝える情報発信

2.林業女子のネットワークづくり

です。それを軸に、メンバーのアイデアと周囲の方々のご協力のもとで、活動しています。

*林業女子会@京都WEB https://fg-kyoto.wixsite.com/fg-kyoto

 

■フリーペーパー「fg」の発行

情報発信が主な目的だったので、まずフリーペーパーを作りました。タイトルは「fg(エフジー)」。京都のカフェや美容院に置いてもらって、林業に関心のない女性にも手に取ってもらいたいと思い、あえて紙媒体にしました。不定期発行で、現在vol.7までのんびりペースで発行しています。

全て自分たちで取材して、編集して、広告をもらって発行まで行っています。創刊号では、当時問題になっていたナラ枯れについて伝えるため、メンバーをモデルに写真家の方に撮影していただき、”林業女子グラビア”(笑)を巻頭に飾りました。

また、林業女子目線で「バレンタインデーにやりたい木に関わること」とか、女性誌に欠かせないイケメン(林業マン)特集もありました。

最新号では「結婚と林業」をテーマに、林業女子会のメンバーが実際にした結婚式のネタなどを紹介しています。

 

■イベント「林業カフェ」など

また、いろいろイベントも行いました。例えば、京都にたくさんある銘木屋さんでの見学会や勉強会をしたり、お茶の先生を山にお招きして野点をしていただいて、クロモジの楊枝を自分で作って和菓子をいただくとか、京都の町家で林業に関するお話&お茶会「林業カフェ」などです。今思うと、京都らしい活動でしたね。

参加者は女性またはカップル限定で募集したので、女性が気軽に参加しやすかったと思います。イベントを通してメンバーになってくれた方も多いです。

林業女子会@京都は、設立してもう8年目になりますが、最近はヨガの先生もメンバーに入って森の中でヨガをしたり、相変わらずゆる~い感じです。

そんなふうに「林業×○○」で、いろいろな切り口を掛け合わせることで、様々な関心を持つ人が自然と集まってきてくれました。

■基本はやっぱり「女子会」

事務所は、寺町二条の京町家にあります。メンバーの方が運営しているスペースで、素敵な空間をお借りしてミーティングなどをしています。

また、基本は「女子会」ですので、ランチや飲み会もかなり多くやりました。創業メンバーにお酒好きが多かったのもあって・・・(笑)気の合う仲間と林業トークしながらのごはんは、本当に楽しいです。

女子会だから、話す内容は雑談がほとんどで、ミーティングの時さえもなかなか本題に行かなかったりします。でもそんなペチャクチャの中から、悩み相談できたり、斬新なアイデアが飛び出たりするので、林業女子はとにかく集まって話すことに意味があるのだと思っています。

 

林業女子会の活動を続けていると、徐々に注目が集まってメディアに出ることも多くなりました。新聞、TVなど出させていただきました。

メンバーの中には、普段から山の中で林業をしている方もいるのですが、林業女子会を通して彼女の日常にメディアからのスポットが当たったこともうれしかったです。また取材を受けたりする中で、あまり人前で話すタイプではなかった人も、発信に積極的になってくれたかなと思います。

 

林業女子会、全国への広がり

京都で始めた活動ですが、段々と「私たちの地域でも林業女子会をやりたい」と手を挙げてくれる方が出てきました。そういうお声をいただいたら、できるだけ直接会いに行って、一緒に飲んで杯を交わして(笑)、意気投合して始めるというやり方をとっていました。2011年に@静岡、@岐阜が立ち上がりました。

林業女子会の団体名には、最初からあえて「@京都」と地域名をつけていたんですが、これには「私たちは京都で地域密着でやっていきたい。」「他の地域でも立ち上げてくれたらうれしいな。」という2つの想いを込めていたんです。それが思いがけず現実になりました。

林業女子会は2017年時点で国内22個、海外に1個の、合計23個になりました。まさか世界まで広がるとは、予想を超える展開にびっくりしています。

中には、活動を終えて解散したところもいくつかありますし、最初は別団体だったけど後から林業女子会ネットワークに加わってくれたところもあります。また、林業女子会ではないけれど、同じような気持ちで活動している林業女性団体もいくつもありますし、だいたい知り合いです。

現在、「林業女子会」を作るには既存の女子会から承認を受けるという方法をとっていますが、堅苦しいルールも、やらなきゃいけないことも決まっていなくて、想いを同じくする仲間のゆるやかなネットワークになっています。特に本部と支部、という関係もありません。

ここからは、各地の女子会の活動を、ごく一部ですがご紹介します。

これは@東京のメンバーです。千葉の森林ボランティアの方と連携して、フィールドを借りて週末にみんなで森づくり活動をしています。

東京で林業関係の仕事をしているメンバーはもちろん、学生、異業種の人もいます。また最近は、実家に山があるけどどうしたらいいのか分からないという主婦の方なども、噂を聞きつけて参加してくれています。

これは@岐阜です。立ち上げ当初は森林文化アカデミーが拠点になっていたこともあり、幅広い専門分野のメンバーがいます。これは木工のワークショップの写真です。アカデミーを卒業したメンバーは、林業会社や行政に就職したり、伝統工芸の職人になったりと、今も林業に関わり活躍しています。

これは@静岡です。都市部にあるカフェの一角を借りて、現場作業員をしているメンバーの話を一般の方に聞いてもらうというイベントでした。街中での木工WSなど、活発にされています。

 

これは@兵庫です。狩猟に興味があるメンバーがいましたので、猟師さんの協力のもと狩猟の見学会を開催していました。ちなみに@兵庫はロゴマークも鹿の形です。

@山口です。小さなお子さんのいるメンバーが多いこともあり、木育にまつわる活動などされています。打ち合わせなども、お子さんが走り回っている中でいつもわいわいとされているそうです。

林業は非常に地域性があって、山も違うし林業のスタイルも違うなと思っているんですが、これは@山形です。山形県は人工林の率が小さくて、ブナなどの天然林がすごくきれいな場所ですが、そういった森も活動フィールドになっています。山と生きる地域の知恵を学ぶ活動を多くされています。

 

ムーブメントのつくり方

言い出しっぺの予想をも超えて広がっていった林業女子会は、一つのムーブメントになってきていると感じます。なぜここまで広がってくれたのかと振り返ってみると、いくつか大事にしているポイントがあったので、まとめておきたいと思います。

「仕組み」ではなく「仕掛け」をつくった。というか結果的にそうなった、これが大事だったかなと思います。

林業女子会は、思い立ったが吉日。とにかく仲間が集まりグループを作って、できることからやってみた所から始まりました。「あまり考えずに先に体が動いてしまうのは、女性特有だよね」と言われたことがありますが、いい意味で本当にその通りなんだと思います。

会の規約も、設立承認のルールも、動いていく中で必要に迫られて、後から作りました。

そういう「仕組み」も結果的に必要にはなりましたが、それよりも大事なことは、関わる人が楽しみながら自然に自発的に動いていく「仕掛け」だったと思います。その仕掛けとは、「林業女子」というキーワードであったり、問題ではなく魅力を伝えていく発信の仕方であったり、ルールをなるべく少なくすることかもしれません。

目的が組織をつくることではなく、ムーブメントをつくることなのであれば、「仕組み」より「仕掛け」なのだと思います。

また、女性ばかりの団体ならではかもしれませんが、目標へのアプローチの仕方に特性があります。

図の左の矢印は、どちらかというと男性的なアプローチです。目標に向かって最短距離で到達することを目指し、無駄なく素早く達成するのが得意です。

いっぽう、右側は女性的です。ミーティングしていても雑談ばかりであっちこっち脱線しながら話していくので、はたして目標に向かっているのかよくわかりませんが、雑談から突然いいアイデアが浮かんだりします。活動内容も幅広く、あれもこれもやってみたいことをくやっています。でもそんな寄り道をするからこそ、周りを大きく巻き込んでいく力があるのかもしれません。

林業女子会は、まさに右側の矢印になっているなと思います。自然とそうなってしまうのです。

 

そして、組織のつくりにも特徴があると思います。さきほども述べたように、23個ある林業女子会には本部も支部もなければ、上下の関係もありません(右図)。トップダウンで物事が決まっていき、専門的なセクションに分かれている一般的な組織の構造(左図)とは違います。

そのため、林業女子会は全体の情報伝達がしにくい、方向性をそろえるのが難しい、といったデメリットはありますが、お互いが自由に活動し交流していく楽しさがありますし、足並みをそろえる必要もあまりないので、個々の行動は早くなります。

林業女子会のネットワークをつないでいるのは、メーリングリストやSNSと、大切にしたい想いを言葉にまとめたもの、そしてお互いの信頼だけです。

 

そして、共感を呼んでムーブメントが広がっていくための、情報発信や活動(仕掛け)のポイントがいくつかあります。

何より強いメッセージはメンバーの笑顔なので、できるだけ、林業の問題点ではなく魅力を伝えること。

林業と何かを掛け合わせること。例えば@京都で発行した「fg」は、林業界よりもフリーペーパー業界から注目されました。

それから、デザインやキーワードです。林業女子会では必ずロゴマークを作ることにしています。「林業女子」というキーワードそのものが、大きな仕掛けになっていたなと感じます。

最後に、全部を自分たちでやろうとせずに、周りの方に甘えて頼ることです。そうすることで新しいつながりができ、仲間も増え、応援してくださる方も増えていきます。

 

まとめ:林業女子とは、ライフスタイル。

「林業女子」と聞くと、皆さんどんなイメージをお持ちでしょうか。私たちの定義では、“林業が好きで何かアクションしているすべての女性”と考えています。

プロの林業士や建築関係の方、学生、ママ、関心のある方どなたでも、職業も年齢も問いません。

これまで、林業に従事する女性のネットワークはいくつもありましたが、間口を広げて多様な方が参画してくれるようなムーブメントになった点が、林業女子会の新しさかなと思います。

日本の林業は地域によって多様性があるので、不思議と林業女子会も地域のカラーが出て、いろいろな活動が出てきているのが面白いです。

林業女子会を通して、私は日本の山の多様さと美しさを改めて知ることになりました。

そんな林業女子会が、一堂に会することはあまりありませんが、いろいろなイベントの時に予定を合わせて集まるなど、ゆるやかな横のつながりも生まれています。お隣の県など距離が近い女子会どうしは、お互いの活動に参加したりと交流もあります。

私もまだまだ会えていない方も全国に大勢います。なので出張や旅行の時には、その地域の林業女子会にコンタクトするようにしています。初めて会っても、林業女子どうしなら趣味も考えも似ていることが多くて、すぐに意気投合しちゃいます。そんな仲間がたくさんいるって、幸せです。

ここで、林業女子会の効果とは何だったかと振り返ってみます。当初は、林業に関する情報発信をメインに考えていたのですが、思いがけない色々な効果があったと思います。

1.学び・知識

一つは、活動を通して自分の地域の林業について知識を得たり、理解が深まったことです。大学では教えてもらえないことも、たくさん知りました。林業を全く知らずに入ってきてくれたメンバーも多いですが、魅力を存分に楽しみながら勉強しています。

2.ネットワーク

ネットワーク、つながりがすごく広がりました。

たとえば、隣の森林組合にいたのにそれまでなぜか顔が見えてなかった林業女子同士が、林業女子会を通して初めて出会えたことなど実際にあって(苦笑)、仲間、友達がたくさんできました。

また全国22カ所、海外にも林業女子会があるので、広いつながりができました。私が面白いと思っているのが、女子会の間で「移籍」ができることです。転勤とか、結婚したら旦那さんの都合などであちこち引っ越すことも多いのが女性です。私自身、関西から東京に引っ越した時、すぐに林業女子会@東京にも入った訳ですが、たとえて言うならAKBからHKTに行くみたいな感じで(笑)、移籍も可能ということです。引っ越した先ですぐに友達ができるって、いいものですよ。

3.キャリア

林業女子の中にもいろいろなキャリアの方がいますので、それをきっかけに学生さんが将来の進路を考えたり、あるいは異業種の方が転職をして林業関係の仕事に就かれたりといったこともあります。

さらには、「林業女子会の活動をしたおかげで、地域の林業関係者の間で女性が林業に就くことへの理解が深まった」という声もあります。彼女は周囲から反対され、採用してくれる林業会社もほとんどなかった中で、女子会の活動を通して知り合った理解ある企業に就職して、林業現場ではたらくという夢を叶えました。

林業女子とは、古くて新しいライフスタイルなのだと思っています。

林業女子は、にわかに出てきた全く新しいものというわけではなく、昔から続いてきた営みです。たとえば、下の写真は私がお世話になった京都の北山林業の古い写真です。

都まで北山杉を売りに行くため、頭の上に重たい丸太を載せて山道を歩いて行ったのは、北山杉の里の女性たちでした。丸太を砂で磨き上げるのも女性の手が欠かせなかったといいます。

昔から、女性はさまざまな形で林業に関わってきました。その関わり方が、時代に合わせてちょっと変わっていくだけだと思っています。そんな林業女子の心の支えとして、林業女子会が貢献できたらと思っていますし、もしかしたら、林業女子会がもっと面白いライフスタイルを生み出していける場になったらと思います。もちろん、そんな楽しそうな女子会の様子を見た人が、林業に興味を持つきっかけにもなってくれたら。

最後に、私たちが大切にしている「林業女子会10の想い」をご紹介して終わります。ありがとうございました。

*詳しくは「林業女子会ポータルサイト」https://forestrygirls.wixsite.com/portal

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